インド・オタク市場のパイオニア。「Anime Pop Mall」のチーフマネージャー、金子雅也さんにインタビュー

臼井です。

何やらインド編がかれこれ2ヶ月以上(たった3記事だけど…)に渡って繰り広げられていますが、いよいよインド編も今回がラスト。

僕がインドのオタク文化事情をリサーチしてネットの海を彷徨ってたそのとき。僕の琴線に触れたのが「インド アニメ」でググると3番目に出てくる「JI Style」という企業。
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http://www.jistyle.net

「JI Style」さんは、「インドと日本を、お隣さんに!」をコンセプトに、日本のアニメ・マンガ・ゲーム・ファッション等をインド市場に参入させることを目的とした会社。

これはお話を聞かない手はないと思い、音速でコンタクトを取ったところ、高速でアニメ・マンガグッズの流通・製造を手がける「Anime Pop Mall」という子会社が現地にありますとの返事が。

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http://animepopmall.com

というわけで、今回はインドでアニメビジネスをされている、「Anime Pop Mall」のチーフマネージャー、金子雅也にインタビューをしてきました。

金子さんとインド「インドでの日本のエンターテイメントに可能性を感じた」

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── こんにちは。まずは金子さんのインドとの出会いなんかも含めて、軽く自己紹介をお願いします。

金子:わかりました。えっと、まずインドに来たのは約2年前で、2013年にインドにきました。「Anime Pop Mall」自体は、2014年末に事業を始めて、ご存知の通り、アニメ・マンガグッズの流通・製造を手がけております。

以前は、大学で情報工学と経営工学を専攻し、大学院まで進んだのちに、とある日本企業のシステムコンサルタントとしてしばらく働いていました。前職やめてから、3,4ヶ月くらい世界をぷらぷらとしていて、そんなときに立ち寄ったのがインドでした。

もともと専門は ITなんですけど、文化交流ということにもすごく関心があって、日本にいたときから、海外の文化を日本においてプロモートする活動なんかも行っていました。そこで、ITをツールとして使って、何か文化交流的なことができないかと考えたときに、今現在インドはITの発展が目覚ましい国なので、自分のやりたいこととマッチするのではないかなと思ったんです。

そして何より市場が大きいということ。
日本とインドは、お互い人口も多く、良質な文化的コンテンツも持っているけど、その割には双方の旅行者が少なかったりだとか、お互いのことをあんまり知らないでいます。そういう文化的なエンターテインメントや、旅行というポテンシャルがものすごく高いのに、それが勿体ないなぁと。

インド市場の潜在性は高くて、例えばインドのエンターテイメント・メディア産業は年率10%以上で成長しているんですよね。

※「2014年のエンターテイメント・メディア産業の市場規模は1.0兆ルピー(約1.8兆円)、前年比11.7%増。
2014年から2019年までの予測CAGR (年平均成長率)は13.9%。
アニメーション・VFX、ゲームの予測CAGRは16.3%、14.3%と共に急成長の見込み。」(データ引用:KPMG)
  URL: https://www.kpmg.com/IN/en/Press%20Release/Frames-2015-Information-Note-KPMG-in-India.pdf

── なるほど。年率10%で成長ってインドのエンタメすごいですね。やはりそれは、インド映画とかが率先して引っ張っていっているんですか?

一番はテレビですね。その次に映画、出版、アニメーション、ゲーム。それらが今伸びています。
そこに海外のエンターテインメントも次第に入ってきているなかで、日本のアニメやマンガといったエンターテインメントも、ポテンシャルがあると思ったのも来た理由の一つです。

現地ファンと交流して初めて見えたインドのアニメ事情

── 様々な日本のエンターテイメントがあるなかで、「Anime Pop Mall」としてアニメ・マンガで勝負しようと思ったのは何故なのでしょうか?

1つは単純に、僕自身アニメが好きというのが理由です。そこまでディープではないかもしれないですけど、毎クール何作品かは必ずチェックしています。

2つ目は、日本文化に関心をもつ入り口として良いと思ったこと。一般的にアニメが好きになった人の多くは、日本文化や観光にも関心をもつと思いますが、これはインドにおいても同じだと感じました。

そして、3つ目は市場性。

でも実は、インドに来た当初は知人に紹介してもらった観光業を営んでいる方の下で、お手伝いをしていたんです。インターンシップという形で、ウェブサイトの改修などをしながら、現地の生活に少しづつ慣れていって、色々情報収集して生活していました。

その一環で、インド版「恋するフォーチュンクッキー」の動画なんかも作りましたね。

これがすごく色々な人と話すいい機会になって、インドのアニメ事情に深く触れるきっかけにもなったんです。

デリーには「Delhi Anime Club」というアニメ好きが集まるコミュニティーがあることを知って、彼らにもこの動画に出演してもらいました。

さらに聞いてみると、何やら彼らは一ヶ月に1、2回くらい集まってミーティングを開いているらしいと。さらには自分たちで同人誌を作ったりだとか、ウェブメディアを作ったりだとかってしている人たちまでいたんです。

そこで彼らと交流しているうちに、「アニメってインドにも思っていたよりファンがいるんだな。」って思って。実際に彼らと交流してみるまでは、インドでのアニメのことなんて本当に何もわからなかったです。

それから他の都市、バンガロールやムンバイとかも調べてみると、同じようなコミュニティーが他にも沢山あったんです。そして何より、アッサム州なんかがあるインド北東部の熱量がものすごいんですよ。

彼らは、もうすでにデカいフェスティバルを自分たちでやっていたりしていて。正直インド北東部に何があるかなんて、それまで全く知らなかったので、ものすごく驚きました。

それから、これってちゃんとしたビジネスにもなるなぁというふうにも思うようになって。

これをどうやって“本格的にビジネス”にしていこうかということを考えるために、その後一回に日本に帰国しました。そしたらちょうど自分と同じようなことをやろうとしている方と日本で知り合うことができて。

── その方が「JI Style」代表でもある安部さん?

金子:そうです。安部さんは、もともと金融が専門なんですけど、インドの案件にずっと関わっていて、日本とインドを長い間行き来していた方なんです。その中で、アニメのライセンスに関わるような仕事もされていて。また「JI Style」にはアニメ業界の関係者の方々も参画、協力されていました。

なので、ライセンス周り、メーカーとの取引、財務会計、法務あたりは安部さんにお任せして、僕はインド側でマーケットをリサーチして、仕組みを作って、如何に市場を拡大していくかというところに注力することになりました。

── そうなんですね。それは金子さん自身、実際に現地へ赴いて、マーケットのリサーチや拡大といったことをやっていきたいという思いが強かったんですか?

金子:まぁこれは、どっちの思いが強いというより、間違いなくどっちも必要なんです。

現地のファンと交流しているだけではいつまでたってもビジネスにはならないので、ちゃんと日本側でもマネジメントができる仕組みが必要で、インド側でもマーケットの調査・拡大っていうのをやらなきゃいけないなっていうのは間違いなくて。でもそれを自分一人でやることは不可能。

もともと仕組みを作るということには関心があったので、現地でゼロベースでこういったことができるのは楽しいです。

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「どうにもならないことはない。」インドでアニメビジネスを始めてみて

── なるほど。実際にインドに来て、ビジネスをされてみてどうでしょうか。この地でビジネスをゼロから始めるって相当な気苦労があるんじゃないかって思うんですけど…。

うーん、苦労はあるっちゃあるんですけど、「どうにもなんないなこれ…。」っていうようなことは、実はあまりなくて。

通関業務が大変だとか、輸入の手続きのときに業者がわけわかんないこと言ってきたりだとか、賄賂よこせとか言ってきたりだとか、そういう小さいことは日常茶飯事ですけどね(笑)

── もうそれだけでとんでもない苦労じゃないですか…(笑)。

あとは、インドはアメリカみたく州によって、法律だとか基準が全然違うので、その辺のことはちゃんと知っておかないといけないくらいですね。

インド国内で発送する場合でも、この州からこの州へは発送は出来ないだとか、この州へは税率が変わるとか、発送する前に特別な書類の届け出が必要だとか、とにかく州をまたぐと国が変わるくらいの感覚に近くて。

州よって文化も違うし、それ故にできた法制度とかもあったりするので、もう全く違う国として見なければいけないです。それがまず大変ですね。

── 州によって法律が違うのって、例えば発送する商品・作品の表現だとか、描かれている描写にまで規制がはいったりするんですか。

することもありますね。法律で罰せられるという程のものではないですけど、検査が厳しいとかはあります。例えばムンバイは性描写に厳しかったりします。

でも、作品の表現だとか描写とかよりは、さっき言ったような税率に関することとか、お金に直結する法律の違いの方が大きいですね。ケーララ州という地方では、そもそもEC販売で消費者に物を売っちゃダメなんていう法律もあります。

── となると、現状そこへは全くリーチできていないんですか?

それがですね、そういうことに詳しい業者さんにお願いすると、ちょちょっとやってくれるんですよ。ちょちょっと(笑)。

── なんともインドらしいですね(笑)。

そうなんですよ。まぁそんな背景もあって、一概にインド市場と言っても一律に見ることはできないんです。

言語、文化、宗教までも変わってくるので、アプローチするときは一枚岩ではいかない。それでも、我々が現状ターゲットとしているのは、インドの中でもアッパーミドル以上の方だけなので、州によって色々な違いはありますけど、ある程度共通性があるのは唯一の救いですね。

── なるほど。今現在アニメが盛り上がっている州を挙げるとしたら、どういった場所になりますか?

ムンバイ、バンガロール、デリー、あとはアッサムなどのインド北東部ですね。ここはもう別格です。

根拠は色々とあるんですけど、恐らく15歳以上の人で、アニメという単語でどういう物か連想できるような人たちは、各都市5、6万人くらいいるんじゃないかと思います。「今期はあれが面白い!」だとか、毎週何かしらのアニメをチェックしているような人たちは、インド全土で5万人くらいかなと。

アニメグッズを買うような人たちは、そういった人たちなので、今現在「Anime Pop Mall」の潜在顧客としてはその5、6万人が対象です。

でもそれも、オンライン上で把握しているだけの人口が5、6万人なので、実際はもう少しいると思います。

インドアニメ市場、拡大のカギは“親”?

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── 人口12億の国の5、6万人って考えると、まだまだかなりニッチですね。そういったインドのアニメファンって、どれくらいのネット環境の下アニメを見ているのでしょうか。

バラつきはありますけど、毎月何十GBとかガンガンダウンロードできる環境があるかって言うと、それはまだまだ少ないです。日本では無制限プランなんて普通だと思いますけど、インドの一般家庭での無制限プランってあまり聞いたことがないです。

速度もなかなか安定していないので、1話見れるようになるまで10分とか15分とかかかってしまうなんて問題もあります。

そうなると、スマホとかモバイル端末で小さいファイルを小さい画面でしか見れなくなるので、DVDとか大きな画面で見る機会があると、ファンの子たちは結構感動してくれたりとかするんですよ。

あとは、親があまりアニメを良いものだと思っていなかったりする家庭もあるので、そういう家の子はスマホで隠れて見ていたりもしますね(笑)。

── なるほど。たった3週間、僕がインドで過ごしてみて思ったことなんですけど、普通にインドで育った青年以上の方って、アニメ=子供のものっていう認識がかなり強いですよね。

そうですね、その傾向は強いです。青年くらいになった子供がアニメとか見ていると、親は「なんでそんな子供のもの見てるのよ」って言うんですよ。

それでまた親の力がすごく強いんですよね、インドって。なので、大人も楽しめるエンターテイメント、大人が見ても面白いコンテンツなんだいうことを、親の世代にもわかってもらうことも僕らのミッションのひとつだと思っています。

── そうですよね。もう少し突っ込んだこと聞くと、アニメのことをよく知らないインドの親御さんたちにアニメの良さを訴求できる要素ってどんなことだと思います?

一つ、子供の教育にとっても、良いコンテンツだよという切り口で紹介するのはいいんじゃないかと思っています。親御さんたちは教育への関心が強いんですよ。

── 教育っていうと、例えば某週刊誌でいう友情努力勝利みたいなことですか?

もう少し、なんだろうな。

道徳的な教養を養えるようなアニメや漫画もありますっていう切り口ですかね。そういった作品を紹介できれば、親御さんの理解も深まるかなって思います。

まぁ教育なんてすっとばして、親御さんもどハマりしてしまうようなアニメをささっと紹介できるのが一番いいんですけどね(笑)。

── 確かにインドって、街にいる怪しい商人たちは、ある意味人を騙して利益を得ることが至極当然のように思っている節がある反面、高い教育を受けてきた人たちは非常に道徳心に満ち溢れていて、親切な人が多いですよね。

そうなんですよ。富裕層の親御さんに、そういった教養もちゃんと得られるんだということを伝えたいですね。

── なるほど。ちょっと話を変わるんですけど、インドってまだ海賊版DVDとかってあまり売ってるとこないですよね。これって単にまだまだ需要がないからなんですか?

確かにこの辺じゃ見ないですね。インド北東部なんかに行くと、ミャンマー経由で入ってきた中国製の海賊版がいっぱいあるんですけど。

海賊版に関しては、アニメだけでなく映画とかであってもインドではあまり見ないですね。そもそも正規版でも一枚100ルピーとかで安いっていうのも理由の一つかもしれません。

── そうなんですね。まだ扱うほどの需要がないからっていう前提はあると思いますけど、アニメグッズの海賊版もまだまだインドでは流通していないですよね。そういったなかで、まだアニメカルチャー黎明期の今、「Anime Pop Mall」さんがちゃんと正規品を流通させ、市場を作っていけたら、インドって今後かなり面白いことになっていくんじゃないかなって思うんですけど。

そうですね。ただ、海賊版が全くないかと言ったら、実はそうでうはなくて。ネット経由で海賊版のグッズなんかを買っている人は結構いるんですよ。でもそれも、知らないで買っているというパターンが非常に多い。

そういった人たちには必ず、これは海賊版ですよってことを教えるようにしているんですけど、みんな決まってびっくりされます。

なので、「Anime Pop Mall」が卸したものであれば安心なんだという認識がどんどん広めていければなと思います。

卸先の小売業者さんにも、一切の海賊版を置かないことっていうのは契約書面上で交わすようにしています。

「Anime Pop Mall」を通せばとりあえず安心っていうブランディングをまずは目指せたらと思いますね。

── 今後アニメ市場がもっと拡大していったときに、海賊版が太刀打ちできないような環境がになっていて欲しいですね。東南アジアでは嫌という海賊版を見てきたので(笑)。

最後に「Anime Pop Mall」、もしくは金子さん個人として何か目標や展望などがあればお聞かせください。

そうですね。やっぱりできるだけ安く本物の日本のアニメ・マンガグッズをインドのファンたちに届けられる仕組みを作りたいというのが直近のミッションですね。こっちで作ってしまった方が安くていいものが出来るものは、こっちでつくる仕組みをつくっています。

また、もっともっとファンの活動を支援していきたいと思います。今でも定期的に「Delhi Anime Club」等の各地のファンコミュニティとは交流をしていて、そういったファンたちが情熱を持ってやりたいと思っていること、コスプレやアニソンカラオケといったアニメパフォーマンスや二次創作活動をバックアップしていければと思います。その一歩目として、10月にデリー・バンガロール・ムンバイで、地元ファンコミュニティと一緒に、「アニマツリ」という日本のポップカルチャーを楽しむファンイベントを開催します。

── ありがとうございました!

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金子さん、ありがとうございました。

次回東欧編スタート!

おしまい。

まとめ

8月26日〜9月2日 インド ニューデリー

オタ活充実度:60/100

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