僕と櫻井孝昌さん。

櫻井さんと出会ったのは、2012年。僕が大学に入ってまだ間もない頃だった。
デジタルハリウッド大学の杉山学長が講師を務める、「クリエータービジネス論」という授業のゲスト講師として、櫻井さんは招かれていた。それが最初の出会い。

当時の僕は、平日は掛け持ちしたバイトを毎日こなしつつ、週末は喜多村英梨さんという声優のイベントを軸に、少しでも気になった声優のイベントには片っ端から行くという、DD声オタの鏡みたいな生活を送っていた。

とにかくアニメ・漫画・声優に没頭していて、大学の授業で興味が湧くものなんて一つもなかった。僕がその授業を受講した理由も、単に楽単と聞いていたからだった。よくある楽単講義のうちの一つとして、同じように適当に受けていた「クリエータービジネス論」の第3回か、第4回くらいだったか、ゲストに櫻井さんは来た。

失礼極まりない話しだけど、「なんか禿げたおっさん来たなー。」くらいにしか最初は思っていなかった。しかしそのおっさんに、何故か僕は見覚えがあった。

「あの人なんかどっかで見たことあんだよなー。」なんてことを、同じクラスで同じオタ仲間だったFくんと話しながら、櫻井さんについてググっていると、当時僕が好きだった声優のうちの一人、上坂すみれさんとともに「TOKYO No.1 カワイイラジオ」という番組でパーソナリティーを伝めている方ということが判明した。

ミーハー心も甚だしいが、そのことを知ってから、僕はその授業を熱心に聞き始めた。そこで初めて、「大学にも意外と面白い授業あるんだな。」と、感じたことを今でもよく覚えている。

授業で櫻井さんが教えてくれる、日本のアニメや漫画が海外で愛されているという事実は、にわかには信じられなかった。何故なら、僕は高校時代の3年半という年月をオーストラリアで過ごした経験があるのだが、あの国ではアニメや漫画が流行っていたとは到底思えなかったからだ。

授業が終わると同時に、僕は櫻井さんに「オーストラリアでは、アニメや漫画なんて流行っていませんでした。」と話しかけた。そしたら「俺オーストラリア行ったことないからわかんないけど、必ずどこかに熱いファンはいると思うよ。」的なことを言われた気がする。

海外にはアニメも漫画もない、やっぱりオタクは日本にいるべきだと思っていた僕が、ちょっとだけまた海外が気になりだした。

しばらくして、櫻井さんとMATCHA代表の青木優さんによる私塾、「国際プロディーサー養成塾」が発足された。僕もその塾生メンバーに加わり、それからというもの、ライブの裏方、ビデオ編集、飲み会と数え切れないほどの経験と出会いをくれた。

ここでの経験がなければ、間違いなくMATCHAでのオタクコンテンツの立ち上げに関わることもなかっただろうし、今ライターとしてお仕事がもらえるようにもなっていなかったと思う。そういえばライターのお仕事をするようになる前から、「お前には文章を書く力ある。」ってずっと言ってくれていたのは櫻井さんだったな。

そうして、MATCHAで外国人向けにのアニメや漫画についての記事を書くたびに、オタク文化という軸での僕の海外への興味はどんどん強くなっていった。そして今年の2月頃、あれは三ノ輪のマックでだったか、こんな相談をした。

「しばらく海外を放浪して、海外での日本のアニメや漫画文化を見ながら、櫻井さんがいつも話してくれているようなオタクたちをこの目で見てこようと思います。」と。
櫻井さんは「めっちゃ面白そうじゃん。繋げられそうな人はどんどん繋げてあげるよ。」と全力で背中を押してくれた。

この旅中に櫻井さんが作ってくれた出会いは本当に数え切れない。

それから約8ヶ月後、10月1日~4日に開催されていたイタリア・ローマでのポップカルチャーイベント「Romics」で僕は櫻井さんと再会を果たした。

「お前痩せたなー、ちゃんと食ってるか?」
「どこの国が一番楽しかった?」
「流石にインドにはアニメ好きな人少なかったか〜。」

と、仕事の合間で忙しかったであろうにも関わらず、色々な話しをした。

そしていつも櫻井さんから話しを聞かせてもらってばかりだった僕が、「いつ帰ってくるんだ? 帰ったらもっと他の国のことも聞かせてくれよな。」とも言われた。
この時、僕は初めて、少しだけ櫻井さんに近づくことができたのかもしれないと思った。
本当に嬉しかった。

それを最後に、本当に、本当に、まだ何も恩返しができていないままでのお別れとなってしまった。

本人から直接聞くことはできなかったのだけれど、大学の授業では僕のことも紹介してくれていたらしい。

櫻井さんがいなければ、この旅はありませんでした。帰国まであと5日。
帰ったら、ちゃんとお別れの挨拶に伺います。

臼井照人

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コメント

  1. みお より:

    臼井さん、ロミックスで櫻井さんの講演にいらしてた方ですよね。あの時少しだけご挨拶しましたが、私はローマで櫻井さんたち御一行のアテンドをしていました。「俺のね弟子がくるんだよねー。今世界中回ってるんだ。若いときにどんどんそういうことやって欲しいよ。」と臼井さんに会うの楽しみにしてましたよ。櫻井さんのように出会った全ての人を大事にして、世界を繋げるような方になってくださいね。突然の訃報で未だに信じられずネットであれこれニュースをみているうちにこのブログに行き当たりました。

    • Akihito Usui より:

      みおさん、こんにちは。ロミックスではまともにご挨拶もできずに大変失礼いたしました…。
      そんなことを仰っていたんですね…。わざわざコメントありがとうございます。
      励みになると同時に、しっかり前を向いて進んでいかなければなと再認識しました。

      コメント本当にありがとうございました!

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